食事介助の正しい立ち位置は?ポイントや注意点、声かけを知ろう

2023-05-03 18:20:50

利用者さんに安心・安全に食事を楽しんでもらうためにも、介護職員の食事介助の仕方は重要です。

しかし、利用者ごとに適切な介助方法は異なるため、介護職員は以下のような悩みを抱えがちです。

  • 左右どちらから介助するのが適切なのか
  • 障害によって食事介助は異なるのか
  • リクライニングの角度はどれくらいが適切なのか
  • 誤嚥・窒息を防ぐ方法はあるのか

本記事では、これらの悩みを解決するために、介助者の正しい立ち位置や、食事時の利用者の適切な姿勢、食事介助における注意点などを紹介します。

 

 

食事介助の立ち位置とポイント

食事介助の立ち位置は、利用者の障害に合わせて左右どちらかの横が基本です。

立ったままの状態で食事介助をしてはいけません。

介護職員は必ず利用者の横で、座って食事介助をします。介護職員が立った状態で食事介助をすると、利用者は上を見上げるように食べなければならず、誤嚥のリスクが高まるためです。

左右どちらに立てば良いか迷う時は、利用者の嚥下機能に障害があるかどうかを確認します。嚥下機能に問題がない場合は、利用者にとって食べやすい位置で介助しましょう。

ここからは、介護職員が悩みやすい「片麻痺の方の場合」「認知症の方の場合」の食事介助の仕方を説明します。

 

片麻痺の方の食事介助

片麻痺の方の場合、介護職員の立ち位置は、麻痺のない健側となります。

片麻痺であっても、障害の程度が低く嚥下機能に問題のない場合は、口の中央に食べ物を運ぶように介助します。嚥下機能に障害がある場合は、口の中央ではなく、健側に食べ物を置くように介助しましょう。

片麻痺の方の場合は、介護職員の立ち位置だけではなく、利用者の姿勢にも配慮が必要です。利用者の正しい姿勢を、「座位」「車椅子」「側臥位」の3つのケースに分けて紹介します。

 

■座位の方の場合

片麻痺の方で座位が保てる場合は、椅子に座り食事をします。その際の注意事項は、以下のとおりです。

  • 顎を少し引いた状態にする
  • 背中にクッションを置き、少し前かがみにする
  • 麻痺側の腕を机に乗せ、体が傾かないようにする
  • 足はしっかりと床につける
  • 足が床に届かない場合は、台を置くなどの配慮をする
  • テーブルの高さは、肘が90度に曲がる程度に調整する

 

■車椅子の方の場合

次に、車椅子を利用されている片麻痺の方の場合です。

車椅子の方は、足をフットレストからおろして床につけることで、姿勢を安定させやすくなります。

また、車椅子を利用されている方の中には、座位をキープすることが難しい方もいます。そのような方は、食事の途中で姿勢が崩れてしまわないように、クッション・タオルなどで体位を整えましょう。

その他の注意事項は、座位の方と同じです。

 

■側臥位の方の場合

最後に、麻痺の症状などが重度の場合に、ベッド上で食事を提供する際の介助方法です。

ベッドのリクライニングの角度は45度~60度を目安に、利用者にあわせて適切な角度に調整します。利用者によっては30度が適切な場合もありますので、あくまでも目安としてください。

側臥位の方向は、健側が下です。また、食事の途中で体がずり落ちたり、姿勢が崩れたりしないように、クッションなどで食事に適した体位に整えます。そして、顔は麻痺側に向けることで、健側の咽頭から食べ物を飲み込みやすくなります。

 

認知症の方の食事介助

認知症の方の食事介助は、介護職員にとって悩むことが多い介助の1つでしょう。

なぜなら、認知症の方の場合は、「食事の拒否」がみられることもあるためです。

このような場合は、食事に対する意欲を高めることが重要です。例えば、以下のような取り組みにより改善することもありますので、お試しください。

  • 献立を一緒に確認する
  • テーブルを拭くなど食事の準備を手伝ってもらう
  • 食事の時間を変更する
  • テレビを消すなど食事に集中できるように配慮する

 

 

食事介助時の注意点

食事介助において誤嚥・窒息を防ぐためには、注意点を押さえた観察が必要です。

食事介助時の注意点は、以下より解説します。

 

正しい姿勢かどうか

1つ目の食事介助時の注意点は、利用者が正しい姿勢かどうかです。

誤嚥・窒息を防ぐためには、食事をする際の姿勢が重要です。顎を少し引いた状態で食事を摂取すると、嚥下しやすく食べ物が気管に入りづらくなります。

逆に、顎が上がっていると咽頭が広がってしまうため、食べ物が気管に入りやすくなります。

また、「体が傾いていないか」「両足が床についているか」「テーブルの高さが合っているか」などにも注意を払いましょう。

座位を維持できない利用者の場合は、クッションを使用して、食事に適した姿勢を確保します。

 

しっかりと飲み込めているか

2つ目の食事介助時の注意点は、利用者が食べ物をしっかりと飲み込めているかです。

食事が口の中に入った状態で、次から次へと食べ物を口に入れるような介助は決しておこなわないでください。最悪の場合、窒息の原因となります。

1口ずつ飲み込んだかどうかを喉仏の動きから確認して、次の食べ物を口に運びましょう。その際に、口の中に食べ物が残っていないかを目視でも確認してください。

 

スプーンの使い方は合っているか

3つ目の食事介助時の注意点は、スプーンの使い方です。

スプーンは口の奥に入れるのではなく、手前に入れるようにします。奥に入れすぎると嘔吐反射が起こるためです。そして、利用者が口を閉じた後にスプーンを静かに抜きます。

また、スプーンに乗せる食べ物の量にも注意が必要です。1口の量が多すぎると誤嚥につながることもあります。スプーンの3分の2程度を目安として介助しましょう。

 

 

楽しい食事にするための声かけのコツ

利用者が楽しく食事をするために、介護職員は「次はポテトサラダを食べましょう」などの声かけが大切です。

逆に、食事介助を無言ですれば、利用者は何かわからないものが口の中に入れられるため恐怖を感じるでしょう。恐怖心から口を固く閉ざしてしまうことにもなりかねません。

また、食事を急かさず、穏やかな口調で声かけすることを意識しましょう。食事介助に関する声かけのコツは以下の3点です。

 

メニューを知らせる

利用者が食事を楽しむために、事前にメニューを知らせることは大切です。

メニューを話題に利用者と介護職員のコミュニケーションを取ることにもなりますし、利用者の食事への意欲を刺激できます。

また、食事前に利用者と話をすることは、表情・覚醒状態を確認することにも役立ちます。

 

口を開けてくれない時は…

利用者によっては、声かけで「口を開けてください」などと促しても口を開けてくれない時があります。

そのような時は、以下の方法を試してください。

  • 好きな食べ物から口に運ぶ
  • 味の濃い食事から提供する
  • 食事の雰囲気・環境を変える
  • 料理の味や香りを工夫する
  • スプーンを自分で持ってもらい、手添え介助する
  • 手で食べられるようおにぎりを用意する

口を開けてくれないからといって、無理やり口の中に食べ物を入れるのは、利用者にとって苦痛ですのでやめましょう。

 

過度な声かけに要注意

楽しい食事のために、声かけは大切です。しかし、利用者によっては過度な声かけを不快に感じることがありますので注意が必要です。

また、声かけが多すぎると、利用者が食事に集中できないこともあります。

 

 

まとめ

食事介助の際の正しい位置は、利用者の左右どちらかの横です。

利用者の横から目線を合わせて、表情・嚥下状況などを確認しながら介助をすることが大切です。片麻痺の方の場合であれば、健側から介助しましょう。

また、誤嚥・窒息を防ぐために、以下のポイントを意識してください。

  • 利用者に適した姿勢
  • 飲み込みの確認
  • スプーンの適切な使い方
  • 適切な1口量

これらを意識し、さらに適切な声かけをすることで、利用者にとって安全で楽しい食事を提供できるでしょう。