介護職のための更衣介助マニュアル。準備・手順・注意点を解説!
2022-04-20 16:52:36
2022-04-26 13:39:31
介護サービスの利用者にとって入浴は、体を清潔にしたりリラックスしたりするために大切な習慣です。
とくにデイサービスでは、入浴を楽しみにされている方が多いもの。しかし、入浴は体温の急激な変化などにより利用者の体調が急変しやすいリスクのある場面でもあります。
そのような事態を予防するために、介護職は入浴介助の手順や注意点について、しっかりと把握しておかなければなりません。
本記事では、入浴介助の種類や注意点、チェックポイントを紹介します。入浴介助におけるチェックリストとしてご活用ください。
入浴介助の目的は、「清潔の保持」「リラックス」「感染症予防」の3つです。それぞれについて解説します。
■清潔の保持
入浴介助の1つ目の目的は、清潔の保持です。洗髪・洗身により体を清潔にすることで、利用者は気分をリフレッシュできます。
さらに、利用者の体を清潔に保つことは体臭を抑制することにつながるため、利用者が他利用者や地域の人との交流時に良好な関係を築きやすくなります。
■リラックス
適温のお湯につかることで副交感神経が優位な状態になります。この状態になると身体の緊張がほどけるため、心身のリラックスにつながります。
■感染症予防
入浴介助の3つ目の目的は、感染症の予防です。皮膚などに汚れがたまっていると、皮膚感染症や尿路感染を引き起こすことがあります。こまめに入浴し身体を清潔に保つことで、感染症の予防につなげます。
入浴介助の方法は、利用者の状態に合わせて4つの種類があります。
利用者に適した入浴介助を提供するためにも、それぞれの種類について理解を深めましょう。
入浴介助の方法の1つ目は、一般浴(全身浴)です。
一般浴の対象となる利用者は、自力で歩行できる方や手すりを利用することで歩行ができる方です。
洗髪・洗身動作を自分で行えることも多いため、介護職は利用者が自分で洗いにくい部分を手伝うことが主な介助内容となります。スムーズに介助するために、それぞれの利用者のサポートが必要な部分を覚えておくと良いでしょう。
一般浴で注意が必要なのは、「浴室内の移動」「浴槽への出入り」「浴槽内での立ち座り」です。
「浴室内の移動」では、浴室の床が濡れているため滑りやすく転倒のリスクがあります。利用者の状態に合わせた転倒予防の配慮が必要です。
「浴槽への出入り」では、浴槽をまたいだり階段を利用したりするため、姿勢が不安定になりやすいです。そのため、バランスを崩して転倒しないよう、適切に手すりを使うなどの介助をして、安定した姿勢を保てるようにしましょう。
「浴槽内での立ち座り」では、滑って転倒したり、座った際に体が浮力で浮き上がってしまいバランスを崩したりすることがあります。利用者が浴槽内で転倒すると溺れてしまいますので、介護職は常に注意を払いましょう。
入浴介助の2つ目の方法は、シャワー浴です。
シャワー浴は、シャワーのみで浴槽につからない入浴方法です。本人の希望により浴槽につかりたくない方や、体力の消耗を抑えたい方、キズがあるため浴室に入らないほうが良いと判断された方が対象となります。
シャワー浴は、一般的に「シャワーチェアー」や「入浴用車椅子」に座った状態で行います。
シャワー浴での注意点は、「シャワーチェアー」や「入浴用車椅子」に移乗する際に転倒しないようにすることです。介護職自身や利用者の身体、床が濡れており滑りやすい状況のため、細心の注意が必要です。
入浴介助の3つ目の方法は、機械浴(チェアー浴)です。
機械浴とは、機械浴専用のチェアー・ストレッチャーに乗った状態で入浴する方法です。機械を利用した浴槽のため機械浴と呼ばれ、介護業界では「特浴」とも呼ばれる入浴方法です。
機械浴には、チェアー浴・ストレッチャー浴の2種類があります。
チェアー浴は、浴槽の壁が開くため、椅子を上下させずに入浴できます。そのため、利用者が恐怖心を感じにくいという利点があります。対象となる方は、自力での歩行が困難で、浴槽をまたぐことができないものの、座位が安定している方です。
チェアー浴の注意点は、利用者が冷たさを感じないよう、チェアーに座る直前にお湯をかけて温めることです。また、機械浴を正しく使用するためにも、取扱説明書はよく読んでおくようにしましょう。
4つ目に紹介する入浴介助の方法は、機械浴(ストレッチャー浴)です。
ストレッチャー浴の特徴は、利用者が寝たままの状態で入浴できることです。ストレッチャーが上下に動くことで、浴槽につかることができます。
座位を保つことができない方に適した入浴方法で、全介助のような重度の方がよく利用する入浴方法でもあります。
ストレッチャー浴の注意点は、ストレッチャーから利用者がずり落ちてしまわないようにすることです。
入浴介助を安全に行うためには、手順とチェックポイントの理解が必要です。
そこで、手順とチェックポイントを「入浴前」「入浴中」「入浴後」の3つの場面に分けて解説します。
入浴前の手順とチェックポイントは以下のとおりです。
1.利用者のバイタルチェックを行う
利用者の体温・血圧・脈拍などのバイタルから体調を確認し、入浴するのに問題がないかを確認します。体調が悪い場合は無理せずに、清拭などで対応します。
2.浴室・脱衣室を23~25℃に設定する
利用者が寒さを感じないように浴室・脱衣室を23~25℃に設定します。浴室・脱衣室を温めておくことでヒートショックを予防する効果もあります。
3.浴槽に38〜40℃のお湯を張る
浴槽に38~40℃のお湯を張ります。熱すぎるお湯は、利用者の体力を消耗させたり、体調急変の原因になったりするため注意してください。
4.滑り止めマットを準備する
利用者が滑って転倒しないよう、要所に滑り止めマットを敷きます。同時に、利用者が歩行時に転倒リスクとなるものが、床に置かれていないかを確認します。
5.利用者の脱衣介助をする
上記までの準備が完了してから、利用者の脱衣介助を行います。脱衣介助と同時に利用者の皮膚状況の観察をしましょう。もし異常があれば看護師・上司に報告をします。
また、脱衣後は利用者にバスタオルをかけることで、体温低下の予防やプライバシーの配慮につながります。
入浴中の手順とチェックポイントは以下のとおりです。
1.シャワーの温度を確認
洗髪・洗身介助の前に介護職がシャワーの温度を確認します。その後、利用者の足先にかけてお湯の温度に問題がないかを確認します。
心臓に負担をかけないように、最初に温度を確認するときは手足などの体の末端から行いましょう。
2.洗髪・洗身介助をする
温度の確認を終えたら洗髪・洗身介助をします。陰部・臀部・脇の下など汚れがたまりやすい部位はとくに丁寧に洗います。利用者が自分でできる部分は、自分でしてもらいましょう。
3.浴槽まで移動する
洗身を終えたら浴槽まで移動しますが、浴室の床が濡れており、転倒リスクがあるため、浴槽までの移動は介護職が付き添います。
3.浴槽内のお湯の温度を確認する
利用者が浴槽に入る前に、介護職が浴槽内のお湯の温度を確認します。「ぬるすぎないか」「熱すぎないか」のチェックは、こまめに行いましょう。
4.入浴する
利用者が浴槽に入る際には、手すりにつかまってもらい転倒を予防します。入浴中は、利用者の表情・顔色などを観察しながら体調に変化がないか確認をします。
入浴後の手順とチェックポイントは以下のとおりです。
1.すぐにバスタオルで拭く
入浴後は、濡れた状態でいると体温低下を招いてしまいますので、すぐにバスタオルで体を拭きます。
2.着衣介助をする
次に、着衣介助となりますが、入浴直後は血圧の変化などによってめまい・ふらつきが起こることもあります。利用者には椅子に座ってもらい、安全を確保してから着衣介助をします。
3.水分補給をする
入浴後は、脱水を予防するために必ず水分補給を促しましょう。
4.耳掃除・爪切りなどをおこなう
入浴後は、爪が柔らかくなるため爪を切りやすいです。耳掃除・爪切りなどの整容が必要な場合は、入浴後に行いましょう。
5.体調の変化に注意する
利用者は入浴により体力を消耗することもあるため、体調の変化には気を配ります。
入浴は体調の変化が起きやすい場面です。そのため、事前にバイタルチェックを行い利用者の体調に問題がないかの確認が必要となります。
入浴介助では、利用者が安全に入浴できるように、以下の点に気をつけましょう。
・血圧・体温・脈などに問題がないか
・皮膚状態に異常がないか
・転倒リスクへの対策をしているか
・感染症予防ができているか
・浴室・脱衣所の室温が適温か
・お湯の温度は熱すぎないか
・洗い残しがないか
・利用者ができる部分まで行っていないか
利用者が安全に入浴を楽しむために、介護職は入浴介助の「目的」「手順」「観察項目」「注意点」のポイントを押さえることが重要です。
本記事で紹介したポイントをチェックして、安心・安全な入浴介助を行ってくださいね。