看取りケアとは? 介護施設職員に求められること
2021-09-21 21:10:00
2021-10-27 13:19:28
ストレスを感じないまま日々暮らしていくのは難しい。それは介護の現場において、働き手・サービスの利用者どちらにも言えることだと思います。
介護サービス利用者は、利用時にどのような悩みを持っていたり、ストレスを感じていたりするのでしょうか。あくまでストレスを感じる理由や原因は人それぞれだということを前提にしつつ、傾向を考えていきましょう。
利用者と言っても、一人ひとりの状況は異なります。サービスを受け始めたばかりの人と、利用が習慣になっている人では違うでしょう。またご家族や親族との関係性・他人とのつながりの有無などによっても変わってきます。
日本政策金融公庫の調べによると、介護サービス利用に関する不満として以下のようなものが挙がっています。
・介護職員の仕事振りがよくない
・介護職員の言葉遣いや態度が悪い
・自己負担額が高い
・利用回数に制限がある
・お願いしても、介護保険内で対応できないと断られることがある
・介護されている時の利用者の様子がよくわからない
・介護職員によって介護の仕方にばらつきがある
・担当する介護職員間の引き継ぎが不十分である
・娯楽・レクリエーションがつまらなそう
・提供される機能回復訓練の成果が乏しい
・提供される食事がおいしくなさそう
・ヘルパーの仕事振りがよくない
・ヘルパーの言葉遣いや態度が悪い
・夜間に利用できない
・利用回数に制限がある
・お願いしても介護保険内では対応できないと断られることがある
・介護されている時の利用者の様子がよくわからない
・ヘルパーによって介護の仕方にばらつきがある
・担当するヘルパー間の引き継ぎが不十分である
介護サービスを利用する人に限りませんが、人間は生きていれば環境などによって体調や気分が日々変化する複雑な生き物です。
「なぜ自分ばかりがこんな思いをしなければならないのか」「あの人の対応が嫌だ」「身体的にどんどん衰えていき、不安だ」「あの人が亡くなってしまった、自分ももう近いかもしれない」「こども扱いされて腹立たしい」「どうして私のやることなすことすべて否定するのか」「誰も話をゆっくり聞いてくれなくてさびしい」
このように様々な悩みや感情を抱えながら日々暮らしています。生じている困難や障害はそれぞれ違いますし、介護サービス利用に至る背景もさまざまです。だからこそ目の前にいる利用者のこれまでの暮らしや歴史を知ろうとしつつ、細かい表情、言動の変化などを日々見ていくことがケアを考えていく上でも重要です。
もちろん1人で知ろうとするには限界があります。その利用者と接している人それぞれが知っていることを共有する時間や記録の残し方・引き継ぎを徹底することもとても大切です。
現場の環境や状況によっては難しい場合もあるかもしれません。その場合は、一緒に働いているメンバーや同職種の違う職場の方とつながりながら、どうすればいいのか考えていくこともおすすめです。
特別養護老人ホームや通所介護施設など、複数の人が暮らしていたり、出入りする場所の場合、利用者にどうしても施設内のルールに合わせてもらわなければいけない場面が出てきます。そんなときも、あくまで利用者やご家族の意見を聞きつつ、すり合わせを進めていくことが大切です。
アルツハイマー型の認知症になると中核症状として、記憶障害や見当識障害の症状が出ることがあります。そんな利用者の言動を、おかしな言動をしていると思い、否定してしまったり、正そうとしてしまう場合もあるでしょう。しかしそうすると利用者は傷ついてしまうことが多々あります。
利用者本人にとっては、症状によって目の前で見えている世界があり、それをもとに発言や行動をしているにもかかわらず否定されてしまうと、パニックになってしまう場合があります。
たとえば、これから食事の時間ですよと声をかけた時に「これから仕事に行くからご飯はいらない」と利用者に言われたとします。その方が既に特別養護老人ホームに暮らしていて、仕事はしていない状況だとしても、「〇〇さんはもう仕事をしていないし、ご飯は食べないとダメです」という返答でいいのかどうかは立ち止まって考える必要があります。
「お仕事に向かわれる前にはご飯を食べないと、終わりまで持たないですよ」のように、声をかけてみた方が、否定をせずに相手の世界を受け止めることができるかもしれません。演技だとしても利用者本人が思い浮かべている情景と今を、一旦は受け止めることも選択肢の一つです。
その世界に自分も参加してみる、共により良い方向に歩んでいくという選択もあります。
介護の現場で日々働いて利用者と接していても、その人それぞれの状況や悩みを自分に置き換えて想像するのはなかなか難しいものです。そもそも自分以外の他者の悩みの本質・核心に触れるのは容易いことではありません。
それでも目の前にいる人がどうしたいのか、何にストレスを感じているのか、日々の小さな変化や言動から知ろうとすることで、利用者のよりよい暮らしのサポートができると思います。
ときには自らの私生活の悩みを人生の先輩として頼ってみるなど、自らと対等な立場、目上としてリスペクトしているということを伝えてみるのもいいかもしれません。悩みながらも利用者と自分のためにいい介護のあり方を模索していきたいものですね。