介護技術には根拠がある。根拠を知ってスキルを向上させよう
2023-05-01 15:42:00
2023-05-03 18:30:16
高齢化が進む日本において、介護では慢性的な人手不足が続いています。さらに、介護を必要とする利用者数は年々増加すると見込まれており、必要な介護職の数も年々多くなっています。介護職員は売り手市場とも呼ばれ全国的に多くの求人があります。
そのような介護職に興味がある方に向けて、まずは、介護職とは何かを説明します。
ここでは、介護の職業やサービスは、どのように分類されているかについて説明していきます。分類を知ることで業務の概要や、介護職に求められている業務内容がみえてくるでしょう。
介護職の分類について理解するために、総務省から発表されている日本標準職業分類を確認してみましょう。
日本標準職業分類とは公的に統計をとるために1つの基準で、業務内容の類似性に基づいて分類しています。
日本標準職業分類で、介護職の大分類は、サービス職業従事者に位置付けられています。中分類は介護サービス職業従事者です。さらに、介護サービス職業従事者から介護職員(医療・福祉施設等)と訪問介護従事者の2つに分類されます。
日本標準職業分類で介護職員とは、医療施設、福祉施設、老人福祉施設などで入所施設、通所施設に勤務する介護職員を指します。仕事内容は、利用者に対して入浴介助や、排せつ介助、食事介助などと定義されています。
もう1つの介護サービス職業従事者は、訪問介護従事者です。これは名前の通り、訪問介護に携わるホームヘルパーを指します。介護を必要とする利用者が住んでいる家を訪問し、必要な介護を提供する者のことです。
参考)2009年 総務省「日本標準職業分類」https://www.soumu.go.jp/
サービス職業従事者として定義されている職業は、他にも多くあります。それらの一部を紹介していきます。
サービス職業従事者の大分類には、多くの職業が分類されています。介護職もこれらの職業と同じようなサービス業と定義されています。
介護職については、サービス職業従事者に分類されることが理解できましたね。それでは介護職が勤務する介護施設は、どのような産業として位置付けられているのでしょうか。
介護業界について詳しく知るためにも、介護施設がどのように分類されているか確認してみましょう。これは、総務省が発表している日本標準産業分類で確認できます。
日本標準産業分類は、日本標準職業分類と同じで大分類、中分類、小分類に区分されています。
介護施設の大分類は「医療・福祉」です。中分類は「社会保険・社会福祉・介護事業」となります。小分類は「老人福祉、介護事業」「障害者福祉事業」「その他の社会保険・社会福祉・介護事業」と定義され、施設の目的の違いで分類されています。
参考)2013年 総務省「日本標準産業分類」https://www.soumu.go.jp/
介護施設の勤務先として最も一般的なのは、通所型事業もしくは住居型事業の介護施設でしょう。ここでは、通所型事業と住宅型事業について解説していきます。
介護施設における通所型事業とは、デイサービスやデイケアと呼ばれる介護サービスとなります。
通所型事業は、利用者が自宅から施設に来訪し介護サービスの提供を受けることが大きな特徴です。介護サービス提供後に利用者は帰宅します。そのため開所時間が通所施設ごとに決まっていて、24時間体制で行われる入所施設とは勤務体制も大きく異なります。
通所事業型では夜に介護サービスを提供しないため、夜勤がありません。毎日ある程度決まった時間帯での仕事となり、変則勤務も少なく、介護職員にとっては働きやすいシフトになる傾向があります。そのため家庭の事情等で夜勤が難しい人には、通所型事業所が勤務先の候補としておすすめです。
次に介護施設には住居型事業があります。住居型事業とは利用者に施設へ入居してもらい、24時間体制で介護サービスを提供します。代表的な例が特別養護老人ホームや介護老人保健施設などです。
住居型事業の大きな特徴は、利用者が入所している点です。利用者は施設を住まいとして暮らしているため、24時間体制の介護サービスが必要です。
そのために、介護職員は夜勤を行う必要があり、シフトも変則勤務が多くなるでしょう。夜勤は給料を増やす手段となるため、より多く給料を稼ぎたい方には住居型事業の施設がおすすめです。
それでは介護職に求められているのは、どのような資質でしょうか。まず、利用者のQOLを維持、向上できる介護サービスの提供が求められています。
それは、利用者が生活を送るうえで支障がある部分を、介護職員が介助することです。介護サービスを利用されている方は、病気などの理由でQOL(生活の質)が低下しています。
例えば衣類を自分でうまく着られなかったり、お風呂で手が届かず洗えなかったりするなどの不便があります。利用者が自分ではできない部分を介護職員が介助することが求められているのです。
衣類をうまく着られない方には、介護職員が利用者の腕に衣類の袖を通すだけで着られることもあります。またお風呂で身体を洗う際に、足の部分が自分では洗えない方には、介護職員が利用者の足を洗い対応します。
注意が必要なのは、利用者ができる部分まで介助しないことです。できることまでやってあげると、かえって利用者の機能低下につながり、利用者のQOLが低下します。
そのため利用者のどこができない部分なのかを見極めて、介護サービスを提供することが大切です。そのような介護サービスを提供するためには、介護技術の研さんが必要です。
次に、利用者が安心して介護サービスを受けられるように、接遇にも気を遣わなければなりません。利用者に対する適切な接遇は、利用者と介護職員が良好な信頼関係を構築するのに役立ちます。
明るいあいさつから始まり、表情やしぐさ、口調などを常に意識することが肝心です。利用者にとって、安心感のある接遇を目指しましょう。
介護職がどのような職業で、介護施設がどのような産業に分類されているかを説明してきました。
これらから介護職とは、介護サービスを提供することが求められている職業と理解できます。また、利用者のQOLを維持や向上を意識しながら業務を行うことが求められています。スムーズに業務を行うためにも利用者との信頼関係の構築は大切です。そのためには、利用者に対する接遇に気をつけましょう。
最後に介護職に興味がある方に向けて、離職率を説明します。
介護職は離職率が高いというイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。実際の離職率は、全産業よりも若干高い傾向ですが、減少傾向にあることも調査でわかっています。
2020年度の調査では介護職の離職率は14.9%で、2005年以降で最も低くなっています。ちなみに全産業の離職率は14.2%で、大差ありません。
参考)2021年 公益財団法人介護労働安定センター「介護労働の現状について」http://www.kaigo-center.or.jp/
参考)2021年 厚生労働省「雇用動向調査結果の概況」https://www.mhlw.go.jp/
これらは介護業界において、介護職員の待遇改善を継続的に行っている結果といえます。これからも、介護職員への待遇改善は続けられることでしょう。
なお、長く勤務するためには、自分に合った介護施設選びがとても大切です。介護職に興味がある方は、入所施設や通所施設、訪問介護など、どれが自分のライフスタイルに合っているかを考えてみましょう。