令和3年度介護報酬改定、どう変わる? 働く職員への影響は?

厚生労働省は令和3年度の介護報酬を改定すると発表しました。改定率は+0.70%。改定にはどんな狙いがあるのでしょうか? また、実際に介護現場で働く人にはどんな影響が生まれるのでしょうか?

今回は「介護報酬」について、また今回の改定の一部を紐解いていきます。

介護報酬とは?

介護報酬とは、事業者が利用者に介護サービスを提供した場合に、その対価として支払われるサービス費用のことです。

事業者が受け取る報酬を10とした場合、7~9割が市区町村(保険者)から「介護給付費」として支払われ、1~3割を利用者から利用料として受け取ります。

各サービスや要介護度ごとに介護報酬額が設定されており、サービス提供に必要な費用に加え、事業所のサービスの提供体制などに応じて加算・減算される仕組みになっています。

また、この介護報酬は3年に一度改定され、事業者は同じサービスを提供していても、受け取る報酬が変動する仕組みになっています。

令和3年度の変更点は?

まずは令和3年度の介護報酬改定の概要を解説します。

1 感染症や災害への対応力強化

新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、日頃からの感染症対策の強化など、感染症や災害が発生した場合でも利用者が必要なサービスを受けられる体制づくりが主な目的です。

たとえば、通所介護(デイサービス)の報酬について、感染症や災害などで利用者が減少した場合に、安定的なサービスを提供可能にするために以下の改定が行われることになっています。

・事業所規模別の報酬区分の決定にあたり、前年度の平均延べ利用者数ではなく、延べ利用者数の減が生じた月の実績を基礎とすることができることとする

・延べ利用者数の減が生じた月の実績が前年度の平均延べ利用者数から5%以上減少している場合、原則3ヶ月間、基本報酬の3%の加算を行う(現下の新型コロナウイルス感染症の影響による前年度の平均延べ利用者数等から5%以上の利用者減に対する適用にあたっては、年度当初から即時的に対応を行う)

また全ての介護サービス事業者を対象に、業務継続に向けた計画等の策定、研修の実施、訓練(シミュレーション)の実施等を義務づけました。

・施設系サービスについて、現行の委員会の開催、指針の整備、研修の実施等に加え、訓練(シミュレーション)の実施

・感染症や災害が発生した場合であっても、必要な介護サービスが継続的に提供できる体制を構築する観点から、全ての介護サービス事業者を対象に、業務継続に向けた計画等の策定、研修の実施、訓練(シミュレーション)の実施等を義務づける

これにより、職員にもこれまで以上に、新型コロナウイルスをはじめとする、介護施設で想定される感染症への具体的な対策や、利用者への対応などの研修が実施されます。

2 地域包括ケアシステムの推進

この項目での主な改定点は「認知症専門ケア加算等の見直し」です。

介護に関わる全ての職員の方の認知症対応力を向上させていくため、介護に直接携わる職員のうち、医療・福祉関係の資格を有さない職員について、認知症介護基礎研修の受講が義務となりました。

また、認知症ケアに関する専門研修を修了した職員の方の配置について「認知症専門ケア加算」として、介護報酬加算の対象となりました。

認知症介護基礎研修とは?

認知症ケアの基礎となる知識や技術を学べる研修。受講資格の対象は、区や市町村に所属する介護施設や事業所に従事している方です。個人ではなく、所属する施設や事業所の責任者がも申し込みを行う。

※画像引用元:厚生労働省「令和3年度介護報酬改定における改定事項について」より


これから介護職に挑戦する方も無資格の場合は就労開始から1年以内の受講が義務となります。各種研修については、eラーニングが活用され、現場負荷の少ない、受講しやすい体制も整えられつつあります。

その他に「看取り期における本人の意思を尊重したケアの充実」が設定されています。看取り期における本人・家族との十分な話し合いや関係者との連携を一層充実させる観点から、基本報酬や看取りに係る加算の算定要件において、「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等に沿った取組の実施が規定されました。

これまでより一層、利用者本人の意思を尊重し、本人の意思が確認が難しい場合でも、家族や医師と連携し、最善の方針を検討するという形になります。また話し合った内容はその都度文章にまとめられ、関係者への共有も求められるようになります。

 

※画像引用元:厚生労働省「令和3年度介護報酬改定における改定事項について」より

3 自立支援/重度化防止の取組の推進

これまでも行われてきましたが、リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養に関する加算等の算定要件とされている計画作成や会議について、リハビリテーション専門職、管理栄養士、歯科衛生士が必要に応じて参加することが明確化されました。

これに伴い、現行の栄養士に加えて管理栄養士の配置を位置付けるとともに、基本サービスとして、状態に応じた栄養管理の計画的な実施が求められるようになります。利用者全員への丁寧な栄養ケアの実施や体制強化等を評価する加算を新設されました。

また、寝たきりを防ぐ取り組みを防ぐ取り組みを促すため、「自立支援促進加算」が新設されました。医師が入所者ごとに、自立支援のために必要な医学的評価を入所時に行い、半年に一回、評価の見直しを行います。具体的には、施設系サービスにおける褥瘡マネジメント加算、排せつ支援加算について、状態改善等(アウトカム)を新たに評価するなど。

医学的評価の結果に基づき、医師・介護職員・介護支援専門員と共同で自立支援計画を作成し、3ヶ月に一度計画を見直し、日々のケアに関する取り組みを評価し加算します。その際、データ提出とフィードバックの活用によって、改善実行のサイクルの推進・ケアの向上を図ることが求められます。

これにより、医師や専門員の方からより的確な意見を受け取ることができ、利用者の重度化・寝たきりなどを各所から意見を出し合い対策していきます。

4 介護人材の確保・介護現場の革新

少子高齢化が進むにつれて介護ニーズが深まる日本において、介護人材不足が深刻化しています。

今回の改定で介護職員の処遇改善や職場環境の改善、テクノロジーの活用や人員基準・運営基準の緩和を通じた業務効率化・業務負担軽減の推進、ハラスメント対策の強化などが義務付けられ、加算要件となりました。具体的には以下になります。

・見守り機器100%の導入やインカム等のICTの使用、安全体制の確保や職員の負担軽減等を要件に、特養(従来型)の夜間の人員配置基準を緩和

・薬剤師による居宅療養管理指導について、診療報酬の例も踏まえて、情報通信機器を用いた服薬指導を新たに評価

・認知症GHの夜勤職員体制(現行1ユニット1人以上)について、利用者の安全確保や職員の負担にも留意しつつ、人材の有効活用を図る観点から、3ユニットの場合に一定の要件の下、例外的に夜勤2人以上の配置を選択することを可能とする

機材導入により、これまで対面や人員配置が必要とされてきた場面の簡素化や、夜勤職員の削減などを選択でき、夜勤が難しい職員の方の継続的な勤務に寄与できます。

5 制度の安定性/持続可能性の確保

介護保険制度の費用が増大している近年において、制度の安定性・持続可能性確保に向け、評価の適正化・重点化、報酬体系の見直しが行われます。

夜間対応型訪問介護において、月に一度も訪問サービスを受けていない利用者が存在する場合など、制度として必要とされるものを重点的に評価し、実態として効率的になっていなかったり需要があまりないと判断される項目に対しては、評価の見直しが行われます。

これにより、これまで重点的に行われていた業務や人員配置などを見直しが行われる可能性もあります。

介護職員への還元・影響は?

今回の改定により、介護職員にどのような影響があるのでしょうか? 上記の変更一覧のうち、介護職員へ最も重点を置いた改善点は「介護人材の確保・介護現場の革新」です。

職員の離職防止・定着促進を図る観点から、事業所には、様々な取り組みが求められるようになります。

・処遇改善加算の職場環境等要件の見直し

既存の「介護職員等特定処遇改善加算」が活用しやすいよう加算基準の見直しがされました。 職場環境等要件に定める取組について、職員の離職防止・定着促進を図る観点から以下が事業者に求められます。

 ー 職員の新規採用や定着促進に資する取組

 ー 職員のキャリアアップに資する取組

 ー 両立支援・多様な働き方の推進に資する取組

 ー 腰痛を含む業務に関する心身の不調に対応する取組

 ー 生産性の向上につながる取組

 ー 仕事へのやりがい・働きがいの醸成や職場のコミュニケーションの円滑化等、

  職員の勤務継続に資する取組

職員の定着に向けて取り組みを行っている事業所に対して、評価される仕組みに変更されます。

・介護職員等特定処遇改善加算の見直し

2019年度改定で新設された「特定処遇改善加算」では「勤続年数10年以上の介護福祉士」に対して処遇の改善を目的としたものでした。

2019年度改正では次のようなルールがありました。

①②③が、【2以上:1:0.5以下】の比率に収めて平均賃上げを行う。

①勤続10年以上の介護福祉士

②経験・技能のある介護職員

③上記に該当しない職種

今回の改正においては以下が設定されています。

・①(勤続10年以上の介護福祉士)の賃上げ額が②(経験・技能のある介護職員)を上回ること

・②(経験・技能のある介護職員)の賃上げ額を③の2倍以上とする【2以上:1:0.5以下】の比率ルールが撤廃され、柔軟に賃金上昇を行えるように。

(画像引用元:厚生労働省「令和3年度介護報酬改定における改定事項について」より)

・人員配置基準における両立支援への配慮

出産や介護を理由として離職を防ぐことを目的に、育児や介護との両立が可能とする環境整備を進め、人員配置基準や報酬算定について見直しが行われました。

・時短勤務制度を利用する場合、週30時間以上の勤務で「常勤」として扱うことを認める

・「常勤」での配置が求められる職員が、産休/育休/介護休暇を取得した場合に、常勤換算することで、人員配置基準を満たすことを認める

子育てなどが理由で時短勤務が必要な場合や産休/育休、また介護休暇などが取得しやすい職場にするという取り組みです。

介護報酬改定で見えてくる職員へのインセンティブ

今回の改定で多数の項目がアップデートされました。「介護職員等特定処遇改善加算の見直し」により、長期勤務や経験豊富な職員の方への処遇改善がその一つです。

また、「人員配置基準における両立支援への配慮」により、結婚出産や介護など、これまで離職の理由になっていた出来事と、仕事の両立が可能となることで、今後の人生設計において多様な選択が出来るようになります。

また、ハラスメント対策の強化や、テクノロジーを活用した業務負荷の軽減なども明言されており、介護職員に向けた処遇改善も行われています。

このように介護業界は日々変化しています。その変化を把握しつつ、選択肢を多く持ちながら自分自身に合う働き方・環境を検討していきましょう。

参考:

厚生労働省 令和3年度介護報酬改定の主な事項について

厚生労働省 令和3年度介護報酬改定における改定事項について