2020-12-15 19:12:44

介護業界の市場

 少子高齢化に伴い、日本の介護業界の市場は拡大し続けています。介護保険の総費用を見てみると、介護保険制度が始まった2000年の3.6兆円から年々増加し、2015年には当初の3倍にも及ぶ10兆円を超えました。そして2025年には20兆円まで増加すると言われています。このように数字からも介護業界の著しい成長が見て取れます。介護サービスの需要は今後も高まる見通しですが、慢性的な人手不足の状態にあり、厚生労働省が公表する公共就職安定所(ハローワーク)のデータによると、令和2年6月時点では、有効求人倍率は4.04倍です。これは一般就職の平均有効求人倍率0.97倍に比べ圧倒的に高い数値であり、コロナ禍の状況で多くの職業の求人が落ち込む中、介護業界の売り手市場の状況は今後も続くと見られています。

 

介護業界の人手不足解消に向けた動き

 先ほど介護業界の慢性的な人手不足のお話しをしましたが、人手不足解消に向けて国も様々な対策をとり始めています。

  1. 修学資金貸付制度

 介護福祉士は社会福祉専門職の介護に関する国家資格であり、取得すると仕事の幅や給料の待遇も変わってきます。そこで国は修学資金貸付制度といって介護福祉士資格取得の推奨として、介護福祉士・社会福祉士の養成学校に通っている間は5万円、入学時と卒業時に20万円を借り入れすることができ、国家資格に合格して介護職で5年働けば返済する義務がない制度を作りました。さらにそのほかにも、都道府県によって他の返還免除制度もあるので、これから介護業界に就職・転職を考えている人は自分が働きたい都道府県の制度をチェックしてみるといいかもしれません。

  1. 再就職準備金貸付事業

 再就職準備金貸付事業といって、離職した介護職員を対象に、再就職準備金の融資があります。1年間以上介護業界で働いた経験がある人が、仕事に復帰して2年以上働いた場合には、返済する必要がありません。特に人員確保が難しい地域などでは、融資金が20万円から40万円に引き上げられるなどの策が考えられています。

  1. 介護職員等特定処遇改善加算

 令和元年10月よりスタートされた介護職員等特定処遇改善加算とは、キャリア(経験・技能)のある介護職員に対し、さらなる処遇改善を図るというものです。職場で最低一人以上、キャリアのある介護福祉士の賃金を月8万円以上アップさせるか、年収440万円以上にするというルールになっています。いくつか要件を満たしている必要がありますが、ハードルは極めて高いというわけではなく、ほとんどの事業所が要件を満たしています。しかし、訪問看護や訪問リハビリテーションなどのサービスは対象外とされてます。

 

介護職の平均年収の推移

 介護業界に就職を考えている人であれば介護職の給与や、介護業界に転職するときの給与の目安を知りたいと思う人が多いのではないでしょうか?そこで厚生労働省の賃金構造基本系統調査の結果をもとに、介護職(看護補助者・ホームヘルパー・福祉施設介護員)の平均年収の推移を表したグラフが以下です。

ホームヘルパーが2019年で下がっていますが、グラフからもわかるように、全体的に年々給与が上がっていると言えます。特に福祉施設介護職員は2013年から比べると40万円近く年収が上がっています。要因としては上記で述べた介護職員等特定処遇改善加算などの制度の導入による効果だと考えられます。またこれからも介護業界の需要が高まるにつれ、給与の改善も期待できるでしょう。

 

まとめ

 介護職は、年齢や性別、学歴に関係なく公平にキャリアを形成でき、将来性の高さが魅力だといえます。まだまだ介護職のイメージはいいとは言えませんが、だからこそそのイメージを払拭するためどんどん待遇などが良くなってきていることは事実です。少子高齢化に伴い、介護業界の市場が拡大されていく中で、より多くの人が介護業界に興味を持ち、これからの介護業界を支えていく人たちの環境や待遇がより良くなればと思います。