介護職の給料は今後どうなる? 特定処遇改善加算の状況とは

2021-07-27 16:55:26

介護職の給料は、賃金構造基本統計調査の結果によると2010年から2019年の間上昇傾向にあります。本記事では、介護職の給料は今後どうなっていくのか、介護職員処遇改善の経緯やこれから予定されている改正内容などを踏まえて考えてみたいと思います。

介護職の給料が今後上がる要素とは

自身の努力、キャリアアップなどによるものではなく、国が定める制度面において介護職の給料が上がる要素にはどんなものがあるのでしょうか。

まず今後の給料を考える上で大事になるのが、介護報酬の改定です。

3年に一度行われる介護報酬の改定では、当該時期の状況に合わせて介護報酬の算定基準が見直されます。改訂にあたっては、全体として何%のプラス改訂、もしくはマイナス改定となるのかが特に注目されます。

給料の面からは、主に介護報酬の改定に合わせて施行、変更される処遇改善加算の内容が見逃せない要素となります。

介護職の需要は高まり続ける中、慢性的な人材不足に陥っているのが確かです。国としても基本的には処遇を改善し、人材を確保したいという考えにあります。

これまでには「介護職員処遇改善交付金(2009年施行)」「介護職員処遇改善加算(2015年施行)」「特定処遇改善加算(2019年施行)」と、名称や条件は変えながらも処遇改善の動きを続けているのです。

処遇改善加算の結果は、賃金構造基本統計調査にも表れています。

以下推移は、賃金構造基本統計調査の結果にて、職種を「ホームヘルパー」「介護支援専門員(ケアマネージャー)」「福祉施設介護員」、企業規模計(10人以上)にて抽出した、月額の「きまって支給する現金給与額」です。

介護職の平均給与額のグラフ

2010年の229,400円から2019年の253,500円に至るまで、基本的には右肩上がりになっているのがわかります。

長い目でみると、介護サービスの内容自体が今後変化していき、それに合わせ給料が変わっていく可能性もあるでしょう。例えば介護施設の種類によっても平均給与には違いがあり、介護老人福祉施設の給料が比較的高めとなっていますが、施設形態が増えるとまた変わってくるはずです。実際2018年には介護療養型医療施設が廃止され、介護医療院が新設されるといった変化が起こっています。

介護職の給料を左右した、介護職員処遇改善の歴史

この約10年で介護職の給料を引き上げてきた要素の一つである介護職員処遇改善については、2009年における始まりから簡単に歴史を紹介しておきます。

2009年 「介護職員処遇改善交付金」を実施

内容:介護職員(常勤換算)1人当たり月額1.5万円の賃金引上げに相当する額が、介護職員の処遇改善に取り組む事業者へ交付された。

2012年 「介護職員処遇改善加算」を施行開始

内容:「交付金」という形だった介護職員処遇改善交付金を引き継ぐ形で、介護職員処遇改善加算が施行開始された。

2015年 「介護職員処遇改善加算」の拡充
2017年 「介護職員処遇改善加算」の拡充

内容:2015年には月額2万7千円相当の区分が追加され、2017年には月額3万7千円相当の区分が追加されるなど、介護処遇改善加算が拡充された。

2019年:「介護職員等特定処遇改善加算」の施行開始

内容:「介護サービス事業所における勤続年数 10年以上の介護福祉士について月額平均8万円相当の処遇改善を行うことを算定根拠に」との方針で策定された。既存の介護職員処遇改善加算に上乗せで加算される。

そして今後ですが、2021年には次回介護報酬の改定が行われる予定で、全体としては0.7%のプラス改訂になると言われています。

参考)令和3年度介護報酬改定の主な事項について(厚生労働省ホームページ)

介護職員等特定処遇改善加算については、職種間の賃金バランスがとれなくなるといった懸念を払しょくするために、平均処遇改善額の配分ルール見直しが検討されています。これにより、介護職員等特定処遇改善加算を算定できる事業者のさらなる増加が見込めます。

介護職員等特定処遇改善加算の状況とは

本記事執筆時点で「介護職員等特定処遇改善加算」の施行開始から1年以上経ちました。

施行の結果はどうなっているのか、状況を確認してみましょう。

第192回社会保障審議会介護給付費分科会における資料に記されている「介護職員等特定処遇改善加算のサービス別の請求状況」によると、令和2年度6月時点で、各サービス合計の算定率は65.5%となっています。

そして、平均給与額については以下のように書かれています。

  • 介護職員等特定処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅱ)を取得している施設・事業所における介護職員(月給・常勤の者)の平均給与額について、平成31年2月と令和2年2月を比較すると18,120円の増となっている。
  • 介護職員等特定処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅱ)を取得している施設・事業所における勤続年数10年以上の介護福祉士(月給・常勤の者)の平均給与額について、平成31年2月と令和2年2月を比較すると20,740円の増となっている。

3割以上の事業者がまだ利用していない状況ですが、平均給与の引き上げには寄与している様子がうかがえます。
そして65.5%という算定率については、前述のように2021年度の介護報酬改定時に配分ルール見直しによって上げていく方法がとられる予定です。

つまり現在は、介護職員等特定処遇改善加算は平均給与の引き上げにつながったという結果が得られたものの、取得する事業者がまだ十分ではないので取得する事業者の割合を高めようとしている状況と言えるでしょう。

自身の力で介護職としての給料を上げていく方法

このように、介護職のニーズの高まり、人材不足、国の意向などによりしばらくは給料が上がっていく(少なくとも下がる要素は少ない)可能性が高いと考えられます。しかし、例えば「処遇改善加算が実施されても、自分の給料には反映されていない」と嘆いている方も中にはいます。

それでは外的要因に頼らず、自身の力で給料を上げるにはどうすればいいでしょう。

給料のベースを上げるためには、介護職の中でも施設を変えたり、キャリアアップを目指したりしていく必要があります。

例えば介護施設だと介護老人福祉施設が平均給与額333,170円、職種では介護支援専門員(ケアマネジャー)の平均給与額が350,320円と比較的高くなっています(厚生労働省「平成30年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」)。

平均給与について詳しくはこちらから
介護職の年収・給与をチェック!~統計から見る介護職~

施設を変えたりキャリアアップを目指したりしていくためには、転職もひとつの選択肢となるでしょう。以前介護職での転職経験がある方に聞いたアンケートでは、約7割の方が「給与」を気にした条件として挙げていました。

給料は介護職としての勤務年数が増えることによっても上がっていきます。自身のキャリアプランを描き、目標達成のために転職も行いながら長く働くことで、自然と今後の給料は上がっていくことでしょう。

介護職全体としての給料は、他業種と比べるとどうしても低めではあります。ただ、国の施策などにより今後ベースとなる給料の上昇が見込め、需要が伸び続ける安定した職種だということを忘れてはなりません。

持っている資格、職種や施設によっても給料は変わってきますから、現在介護職で給料に不満があるという方は、一度当キャリアスマイルの求人情報にも目を通し、転職も検討してみてください。

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